11/07/2006

ゴダール

 一枚の写真の中にも人それぞれの作風があるが、ある日突然その根底となっている(あるいは影響された)ものが何だったかという答えが浮かび上がってくるときがある。
  先日、ジャン=リュック・ゴダール監督の「カルメンという名の女」のDVDを買った。この映画は、今は亡きシネヴィヴィアン六本木で同監督の「パッショ ン」に続いて上映された作品で、当時リバイバルで観た「気狂いピエロ」に夢中になっていた17歳の自分が、リアルタイムで体験したゴダールだった。
 家電製品やソフトの普及により、いつでもお気に入りの作品に触れることができるという一昔前では考えられなかった現在、改めてそれらを見返してみると、自分自身の脳裏にいかにその映像と音が深く焼き付いていたかということが分かってくる。
 早朝の海辺で撮影した一枚を見て、ぼそぼそとつぶやくようなゴダールの声が聞こえてきたのは偶然ではなかった。

9/06/2006

さよならスカンジナビア号

 関東圏のダイバーだったら大瀬崎へ潜りに行ったことが一度はあるだろう。車で行くと、東名高速の沼津ICを降りて、南伊豆方面へ海岸沿いの道路をひた走る。その道のりで必ず目に入る白く美しい客船の姿があった。
  船の名はスカンジナビア号。かつてステラポリス号として世界を航海していた豪華客船をフローティング・レストランに改装したものだ。そのスカンジナビア号 も経営母体の財政事情からスウェーデンの企業に売却されることとなった。そして、第三の人生を送るため、スウェーデンへ向けて8月31日に沼津を出向した のだが、1日の夜に和歌山県串本の沖合3キロであっけなく沈没してしまった。あまりに唐突な幕切れに、これは何か裏がありそうだと勘ぐってしまうのは 仕方のないこと。当然、莫大な保険もかけられていることだろうし。
 真実は水深72メートルに沈むスカンジナビア号へ潜水してみなければ分からない。

7/12/2006

アロハシャツ

 所用で御徒町へ行ったところ、季節柄かそれともアメリカンカジュアルで流行っているのか、アロハシャツを店頭にぶら下げている店が多く目に付いた。
 その昔から、常磐ハワイアンセンター(今はスパリゾートハワイアンズ)に代表されるように日本人はハワイが好きだ。人海戦術JALの成果で、ハワイの文化は日本に根付いたと言っても過言ではない。昨今はまたハワイブームが再燃しているようで、飲食店や雑貨、フラダンスに人気があるが、アロハシャツをファッションとして日本で着るのはこれまた微妙なところ。ネームプレートやIDカードなどぶら下げていると、どこかの市役所の職員か、はたまたリゾートホテルのスタッフみたいになってしまうので気をつけなければならない。
 と、思いつつ衝動的に一枚購入してしまった。最近人気の和物の柄を選んだのだが、どう見てもその筋の人のよう。
 アロハシャツの着こなしは難しい。

7/02/2006

ぬりつぶせ

 何故かストーン・ペインティングの講師をすることに。参加者は小学生約50名と人数も多く、時間も限られていたため、あえてきめ細かな作品づくりをさせる事はしなかった。
 あるレベルの完成度に達する作品をつくらせることは、一定のマニュアル通りに進めれば可能なこと。しかし、それだと作業になってしまう。創造するということは、なかなか思うようにいかなくて悔しいとか、思いも寄らぬものが出来上がってびっくりしたというような気持ちがわき上がることが大切であって、必ずしもうまくつくる必要は無いのである。結果、ビビッドな色に塗りたくられた大小様々な石は、小どもたちの躍動感がストレートに伝わってくるものとなった。
 そんな石の姿を見て、忘れかけていた事を思い出した。とにかく、試験でも空白の回答欄は残すな。画用紙は白地を残さずに塗りつぶせ。意図的な空白や格好だけの空間は、ただ装っているにすぎないということを。

6/26/2006

光の川

  先週末、先輩のフォトジャーナリスト・新藤健一さんの出版記念パーティーに出席するため六本木アカデミーヒルズ40へ行った。何故この会場が選ばれたか というと、その著書「疑惑のアングル〜写真の嘘と真実そして戦争」(平凡社)のカバー写真として使われている米軍へリポートを眼下に見ることができる場所 で、映像情報の検証や戦争の影を明らかにするその内容がストレートに伝わってくるからだ。しかし、六本木ヒルズという空間は、集まったつわものどもにとっ て、とても居心地が悪そうだった。
 乾杯が行われたときはまだ明るく、霧に包まれていた東京の空も、気が付くとすっかり闇に覆われていた。窓越し に地面を見おろすと、道路を走る車のライト がいくつもの光跡を描いている。そのとき頭の中に一昨年流行ったスガシカオの曲が流れ、ふっと思った。ホリエモンと村上ファンドもこの光の川に消えてしまうのだ ろうかと。